2008年04月24日

何が人を動かすのか?

先週、コンテンポラリーダンスを観に
埼玉の芸術劇場に行ってきた。

劇団員のK君が同行。
彼はこの類のダンスを観たことがなく
本人から

  ぜひ、観てみたい!

と申し出があったので連れて行くことにした。

夜の公演のため新幹線だと
終演までいられないところだったが
K君が車の運転してくれることになったので
時間を気にせずに最後まで観ることができて
本当に良かった。

少し早めだけど、お昼頃長野を出発。
こちらを出るときは曇りだったが
上信越道に入ると、雨がパラパラ降ってきた。
暫くして、ふと見上げるとそこには
あのゴツゴツとした妙義山の姿。

  お?おぉ~!!
  なんだ、この表情は?
  ・・・幻想的だ・・・


霧のような白い雲から頭を出した妙義山。
ベールのような霧が彼の頭を横切っていく。

  こんな妙義山、観たことがない・・・

この天候のおかげでいつも観ている彼とは
異なる表情と出会うことができ
一気にテンションが上がっていく。

ノンストップで関越を走りぬけ
川越インターを降りる。

晴れていたら、どこか散策でもするところだが
外はドシャ降り

  ま、しょうがないさ。
  こういうときはゆっくり、ゆったりが一番だ。

夕方、芸術劇場に向かう。

劇場の入り口には、懐かしい関係者の笑顔があった。
招待席に案内され、椅子に腰を下ろす。

ここは、埼玉芸術劇場の小ホール。
前回、リア王を観に来たときは大ホールだった。
この小ホール、全体が黒で覆われている。
天井が思いっきり高い。
舞台奥に設置されている左右に開く大きな扉が
なんとも言えない存在感をかもし出している。

  いい空間だ・・・

19:00、開演。
一幕は、プロのコンテンポラリーダンサー“ファビアン”の小作品。
タイトルは『エディ』ー身体の記憶の写真ー
ファビアンはフランス人で、コンテ界では超一流のチームで
鍛えられてきたダンサー。
その彼が二年前、大きな事故に遭遇。
周囲の誰もが

  もう、ダンサーとしては再起不能だな・・・

と、思われるような大事故だったようだ。
彼は苦しむ・・・もがく・・・
自由にならない体・・・落ちていく精神・・・
のた打ち回りながら、どん底の中であがく、あがく、あがく・・・
体のあちこちの白い包帯が目にしみる。
やがて、白い包帯をかなぐり捨て始める彼・・・
見えない回復への出口をようやく探りあてたのだろうか?

・・・・・・・・・・・・

  なんだろう・・・
  観終わった後の、この感触・・・
  胸がトクトクしてる・・・


ダンサーの彼が再起不能に陥り
そこから脱却していくサマが
身体と感情で存分に表現されていた。

  心が揺さぶられたんだ。
  そう、心が・・・


私が造りたいと思う作品と、同じ触感を持つ作品との出会い。
そんな感じだった。

K君は、やたら「面白い」を連発。
コンテ初体験の彼にとってこの作品は
意味こそ明確にわからなかったかもしれないが
身体性や演出面で、大きな刺激を受けたのだろう。

二幕は、高崎の「バレエ ノア」の生徒が出演する作品
演出・振付はファビアン。
通訳と助手はファビアンの奥さんでプロダンサーのAZUSAさん。
彼女はこのバレエ団の主宰者S先生のお嬢さんで
ヨーロッパでコンテンポラリーのトップを走り続ける
ピナ・バウシュのダンスカンパニーに所属しているトップダンサー。

この二人に指導を受けられる生徒は幸せだよね。

まずは、衝撃的な導入シーンに、ギョッ!
どうやら、学校が舞台のようだ。
仲間意識、悪口、疎外、村八分、いじめ・・・
若い彼女たちの心の声がダンスと
細部まで計算しつくされた音楽や映像で
リアルにそしてダイナミックに表現されていく。

身体を徹底的に駆使した振り付け・・・

去年、私が講師で教えたボイストレーニングも
この舞台では大いに生かされていて
台詞や声、叫びなどが随所に入っている。

あの振り付け・演出についていける
彼女たちの精神力と体力って、なに?

短大の生徒や、うちの準劇団員たちと
同じ年齢の子たちだよ。

  凄い・・・久しぶりに凄いものを観た・・・

K君も大変な衝撃を受けたようだった。

  凄い・・・凄い、凄い、凄いっ!
  あ~ボキャブラリーが少なくてすみません。
  でも下手に言葉を連ねると軽くなりそうで・・
  いやぁ、本当に凄かった!!


うむうむ、いいことだ、いいことだ。
役者として、こういう刺激を受けるのは大切なことだもの。

今日の舞台は―

若い女の子たちが、羞恥心や身体の痛みを乗り越え
体をはり、心をさらけ出し、髪の毛の末端から
足の指の先っぽまで使って演じていた。

彼女らの年齢は14歳~26歳の中学生~社会人。
プロではない、バレエ団のレッスン生たちだ。
その生徒たちがこの領域に来るなんて・・・
血の滲むレッスンだったことは明らかだ。

終演後、関係者と対話する中で
なんとなくレッスン風景が見えてきた。

もともと、このバレエ団のレッスンは大変厳しい。
にもかかわらず、今回の舞台レッスンはもっと過酷だったようだ。

彼らのテーマは

  何がひとを動かすのか?

私が常に考えているテーマと同じ。

で、生徒たちにこの問いかけをしながら
納得するまでディスカッションを重ねたらしい。

ファビアンが問いかける。
生徒はその問いかけに答えられるまで開放してもらえない。

振付けにしても同じで
ファビアンと生徒自身が納得するまで帰宅出来ない。

舞台一ヶ月前からのレッスンは、毎晩深夜に及んだと言う。

昼間は学校・会社に行って、夜は夜中までレッスン。
学生や社会人でも、逃げずに挑み続ければ
こんな凄い舞台が出来るという証明だ。

ふと、自分を振り返る。

  最近の私、少し甘くなってるよなぁ・・・

S先生と去年話したことを思い出した。

  観客が待ってくれてるんですもの。
  その期待に応えるために
  厳しさは必要なんですよね。

徹底的にディスカッションをして
互いに納得しながら進めるのって
膨大な時間が必要だし
遠回りにも見える道程だけど
それを諦めずにやり抜くことが
「人の心を動かす舞台」への近道なのかもしれない・・・
と、改めて痛感。

何とかして時間的問題をクリアしなければ。

うーん・・・稽古場が公民館だからねぇ・・・

21:30には稽古を終りにしなければならない。
これが、本当にきついんだよね。
とことん突き詰めていけない一番の理由がコレ。

24時間、あるいは、一晩中自由に使える空間が欲しい。

まぁ、これは現状、希望でしかなく実現のメドはない。
ならば、どうするか・・・

う~む・・・対話の時間を別に作るか・・・




Posted by yuririn  at 16:17 │TrackBack(0)

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プロフィール
yuririn
NPO法人 劇空間夢幻工房 理事長 演出家/日本演出者協会会員/長野市芸術文化振興方針審議会委員/清泉女学院短期大学非常勤講師/夢幻∞アクティビティーズプログラム「日本舞踊」「表現としての演劇」講師 血液型0型☆てんびん座
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